【THE 打楽器 OF MARCHING】を振り返って

平成30年 タイ王国×美郷町 ホストタウン推進事業
【THE 打楽器 OF MARCHING】を振り返って

期日:平成30年10月14日(日)
会場:美郷総合体育館リリオス

今年度もたくさんのスタッフの協力と、来場者からのたくさんの温かい拍手に支えられ、無事に標記のイベントを終えることができました。そして、何よりKasem先生、大窪先生、海老沢先生の3人の講師の先生方には、すばらしい演奏を披露していただいただけでなく、我々マーチングに携わる者がこれから進むべき道についても示唆していただきました。今回のイベントを振り返って、成果と課題についてまとめていきたいと思います。

1.事前準備について

講師の先生方と各団体への連絡調整については、加賀谷会長を中心に、ZIPの皆さんにご尽力いただきました。地域の一般バンドが、地域の子ども達のために運営に携わってくれるということは、学校の指導者としては非常にありがたいことです。学校部活動が社会教育への移行を模索する中で、地域のお兄さんお姉さんが活躍する姿を間近で見られる機会は大変価値のあるものでした。

2. Kasem先生,海老沢先生によるマーチングクリニック (10/13(土))

今回は小学校1団体、中学校2団体のクリニックとなり、1団体90分のゆったりとした日程で時間を設定できました。Kasem先生も海老沢先生も休憩もとらずに熱心にご指導くださいました。お二人の熱いハートに心から感謝です。そして、それを受けてみるみるレベルアップしていく小中学生!ほんのちょっとしたアドバイスで見事にブラッシュアップされていく姿に、我々指導者は子ども達が本来もっている力をもっと引き出さなければと強く感じました。

3.パーカッションアンサンブル、ドラムライン リハーサル (10/13(土))

パーカッションアンサンブルには、美郷中学校・大曲中学校・ZIP・加賀谷田鶴子先生・Kasem先生が参加してくれました。オールメンバーでは、この場が初めての合わせです。何度も何度も繰り返し練習する真剣な表情が印象的です。

また、誰よりも真剣に練習していたのがKasem先生でした。体育用具室の片隅でひたすらにソロの練習をする横顔はとても神々しく見えました。

4.  THE  打楽器  OF  MARCHING (10/14(日))

(1) 美郷キッズによる合同演奏

さて、イベント当日。美郷町内3小学校(仙南小学校・六郷小学校・千畑小学校)のスクールバンドによる合同演奏で幕を開けました。バンド紹介では、各校の紹介を別の学校の児童が担当し、それを受けてそれぞれが短い曲を演奏するというスタイルで、とても温かな雰囲気になりました。最後は3校合同の演奏に大きな拍手が送られました。

(2) 美郷中学校吹奏楽部によるフロアドリル披露

前日のクリニックを受けて、さらにレベルアップした美郷中学校吹奏楽部のステージでした。美郷中の生徒達は、自分たちが出演するだけでなく、大会の準備や片付けなどの運営面にも積極的に協力してくれます。演奏のレベルアップももちろんですが、このようなイベントに、運営する側として参加することも、児童生徒の成長にとって大きなプラスになるものと考えています。

(3) パーカッションパフォーマンス:Sensational ZIP パーカッションメンバー

ZIPのメンバーがKasem先生編曲の「Sunnyside Cruise」を演奏しました。演奏者全員が、本当に楽しそうに演奏する姿が印象的です。大会に出て賞を競う楽しさも確かにありますが、本来の生涯学習としての一般バンドの姿がそこにあったような気がします。繰り返しになりますが、共に音楽を奏でる仲間と、それを聴いてくれるお客さんと一体になって音楽を楽しんでいる姿を小中学生に見せられたことは、本当に大きな収穫だったと思います。

(4) パーカッションアンサンブル:Kasem先生,加賀谷田鶴子先生,Sensational ZIP,美郷中学校,大曲中学校

今回出演した打楽器奏者全員による「情熱大陸」の演奏です。昨年、大窪先生に編曲していただいたものです。本協会会長の奥様、マリンバ奏者の加賀谷田鶴子先生の華麗なソロで始まり、おなじみのメロディーが会場に響き渡りました。プレイヤーが全員揃っての練習が前日だけとは思えないようなクオリティに、会場の熱気が一気に高まりました。

Kasem先生はティンパニでの参加。楽器を提供してくれた美郷中保護者からは、同じ楽器なのになぜこんなにいい音がするのかという驚きの声が聞かれました。

(5) 打楽器体験コーナー

「情熱大陸」を演奏した打楽器をそのままフロアに置き、客席からお客様が下りてきて、自由に楽器に触れていただきました。もちろん、情熱大陸のプレイヤーはそのままそこにいますので、楽器を体験しに来たお客様(主に小学生以下の子ども達)の相手をしながら楽器の管理もしてくれました。初めはおっかなびっくりでしたが、『叩いて音を出す』というきわめてプリミティブな欲求を満たすべく、子ども達はとても良い表情で楽器に触れていました。そして、その子ども達以上にプレイヤーの皆さんがとても優しい表情で声をかけたり手を添えたりしてくれていた姿が印象的です。

また、『叩けば音が出る』パーカッションではありますが、それだけに、叩き手が代わるだけでこんなにも奏でるサウンドが違うのかということ、打楽器の奥深さにあらためて気付かされました。

(6) 講師によるソロ演奏

◯ 大窪研二先生「スネアソロ・ルーディメンタル・ハイ」(スネアソロ)

お客さんと一緒に演奏前のストレッチやウォームアップをする、しかも、それを競争にして賞品も出すという前代未聞のソロ演奏のスタートで大盛り上がりでした。ちゃんと大窪先生の言うことを聞いてまねするあたりは、秋田の県民性を感じました。

演奏についてはまさに超絶!昨年を上回るパワフル且つテクニカルなパフォーマンスに、会場の全員が度肝を抜かれました。

◯ Kasem先生「Mecanique」(マリンバソロ)

前日、薄暗い体育用具室でひたすらに練習し続けていたKasem先生のソロ。アリーナに一人で演奏しているのに、会場全体がKasem先生の生み出す音色に魅了されていきました。会場の空気が張り詰める、背筋が伸びるような緊張感と、超絶技巧。息をするのさえ忘れてしまいそうになるような、終わって欲しくないような、そんな演奏を聴けたことが幸せな気持ちになる演奏でした。

また、当日はタイから大仙市西仙北地区まで教育システムの研修に来ているアップル先生がタイの正装で来場しており、Kasem先生の演奏を聞いた感想やタイ王国と日本との友好のメッセージをお話しいただきました。

(7) ドラムラインパフォーマンス

昨年も大好評だったドラムラインパフォーマンスは、今年も大窪先生アレンジの「C the B」。来場者もこれを楽しみに来ていたのではないでしょうか。

今回は、大曲中学校吹奏楽部のバッテリーのメンバーと山形からMountain Ashのお二人も参加してくれたので、本番前にインタビューしました。大曲中学校の生徒さんは、前日からの練習でドラムだけの演奏の楽しさに目覚め、気合いの入ったコメントを聞かせてくれました。Mountain Ashのお二人からも、このドラムラインにかける熱い思いと参加できる喜びの言葉をいただきました。こちらとしてはわざわざ秋田まで来て参加してくださることに感謝です。

演奏前に大窪先生からタイトルのネタばらしあり、会場のみんながニヤニヤする中、演奏が始まると一気にボルテージがアップ!熱い熱い演奏に、会場は割れんばかりの拍手に包まれ、アンコールでもう一度!メンバーの誰よりも楽しそうに演奏している大窪先生でした。

★ サプライズ

イベント当日は、各団体への連絡やタイムスケジュール編成などに尽力してくれたZIPの伊藤智江子さんの誕生日ということで、日本の師である加賀谷田鶴子先生が「ハッピーバースデー」を演奏する中、タイの師Kasem先生からの花束贈呈を行いました。会場がとても温かな空気に包まれました。

(8) 全員合奏「はずむ心のマーチ」

最後は恒例となった「はずむ心のマーチ」の演奏です。この曲は、秋田県吹奏楽連盟小学校部会が『秋田県小学校バンドフェスティバル』20回を記念して、地元大曲出身の後藤洋先生に依頼して作っていただいた曲です。夏に行われる『秋田県小学校バンドフェスティバル』では、最後に出演者全員で合同演奏をしていますし、学校行事やイベントなど様々な場面で演奏されており、今では県内ほぼすべての小中学生が演奏できます。また、ZIPメンバーの皆川拡さんによるマルチグレードバッテリーアレンジ譜も作成されており、マーチングパーカッションも一緒に演奏できるようになっています。当日は指揮者を立てず、バッテリーに合わせて演奏しましたが,本番ではテンポもバッチリ決まって、最後は大きな拍手で締めくくりました。演奏した小中学生も大人も、とても満足した表情でした。

5. 課題として…

○大会で上位を目指すことももちろん楽しみの一つではありますが、今回のイベントのように,同じ楽器の仲間が集まって演奏するという楽しみ方があるという新しい喜びを味わうことができたのは大きな収穫でした。特に小中学生にとっては、打楽器だけでこれだけの演奏ができるということに触れた経験は、これからの音楽人生にとって大きなプラスになると思います。

▲さまざまな学校行事やイベントが重なったり、上位大会直前の練習があったりして、参加団体を増やすことができませんでした。学校行事は仕方ないにせよ、自団体の練習では味わえない喜びや学びがあることを、口コミだけでなく、ウェブサイトやポスターの配付範囲拡大など、多様な方法でより広く、この事業のすばらしさを伝えていく必要があると思いました。


事務局長就任初年度でもあり、運営については事務局長が一番手探りの中、加賀谷会長をはじめとする県協会役員、音楽ボランティア『アダージョの会』,Sensational ZIP Drum&Bugle Corpsのメンバー、美郷中学校吹奏楽部の顧問の先生方と部員、そして3人の講師の先生方には、心から感謝いたします。

文責:秋田県マーチングバンド・バトントワーリング協会  事務局長 梅川 覚